窪田晶子の小話

日本人の感受性

遅ればせながら、ベストセラーの本「国家の品格」を読みました。

オペラアリアを歌っていると、テクニック以外の壁を実感することがあります。
《血の滴るような肉を食べる文化で育った人たちの音楽だな》と。
その音楽のエネルギーの強さたるや・・・分厚いステーキをペロリと食べられるくらいのパワーがなければ、その感情は沸き起らないだろうなぁと圧倒されることがあります。わびさび文化の日本人ではちょっとありえないなという感情が、セリフと分厚い音楽にのせられて大波のように迫り来る。日本人ならばさめざめと涙を流し、奥ゆかしくその場を立ち去るような場面でも、オペラとなると感情をむき出しにしてオイオイ泣きながら悲しみを訴える。そこに妥協は一切ナシ!エネルギー全開です。

さて、読もう読もうと思いながら今頃になってしまいましたが、ベストセラーの「国家の品格」を読みました。日本古来の「情緒」や「形」、そして自然に対する感受性は日本人が誇るべき素晴らしいものだと書かれてあります。明日から公演する“唱歌の学校”の稽古の移動中に読んでいたのですが、これはグットタイミング!「そうそう。」と大きく頷きたい気持ちになります。
花や月、四季などに対する繊細な感受性。唱歌やよく知られた日本の歌などは、まさにその日本人の感受性から生まれた詩が題材となっています。“富士の山”を歌えば青空にりりしく聳え立つ富士山を思う、“七夕”では♪笹の葉さらさら〜♪というフレーズに涼やかな風か吹くのを感じる、“虫の声”のおもしろさ・・・これは日本人の豊かな感性のあらわれであり、またもっとも身近な日本の文化ではないでしょうか。

競争社会で見過ごされている日本の文化や伝統。“美しい国、日本”を目指すのなら、まずはそこを認識すべきではないのかな????


posted at 10:32:19 on 2006-11-28 by piccola - Category: 窪田晶子の小話 TrackBacks

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